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タイトル | 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない |
| 著者 | 桜庭一樹 | |
| イラスト | むー | |
| 出版 | 富士見ミステリー | |
| 発売日 | 2004年11月 |
| 執筆者:jade | 評価:B |
| この物語は海野藻屑という少女が殺され、彼女の友人の少女(山田なぎさ)が死体を発見したという新聞記事から始まります。その後、なぎさが藻屑と出会ってから彼女が殺されるまでの二人が過ごした日常と、兄の友彦と共に藻屑の死体が眠るであろう山へと向かう際の会話の二つの場面と時間軸を描きつつ進行していき、彼女の死体を発見するところで時間軸は一致。そして、物語はクライマックスへと向かいます。 物語の冒頭で結末が決められていると小説の醍醐味が半減しそうなものですが、そこへ向かう過程がなかなか読み応えがあり、物足りなさを感じることはありませんでした。むしろ安易なハッピーエンドへは向かわないと宣言し、その通りの結末を迎えるので、ご都合主義な物語よりはよっぽど好感が持てますね。 また、構成もさることながら文章力もかなりのレベル。思春期の少年少女特有の純粋さや残酷さといった特別な何かを独特の言葉を用いて表現しており、ありきたりな日常にファンタジーの要素をもたらしています。これはこの作者の特徴で、この作品だけでなく、他の作品にも言えることなんですけどね。この作品が肌にあった人は他の作品もきっと気に入ると思います。 ただし、犯人は一目瞭然ですし、犯行動機もトリックも特にこれといったものがあるわけでもないので、ミステリーとしてはまるで評価に値しません。まあ、ジュベナイル小説としてはなかなかのレベルにあるので、最初から割り切って読むべきですね。 個人的には主人公のなぎさが聡明でひらめきを頼りに事件を解決するような話ではなく、あくまでも無知で無力な歳相応の少女という設定が気に入りましたね。ミステリー小説にありがちな普段は目立たない子が抜群の冴えを見せて事件を解決するというような話よりはよっぽど現実的であり、親近感が持てます。まあ、大人びているようで夢見がちなところがあるアンバランスな少女なので、多少他のクラスメイトたちとは感じが違いますけどね。 それから友彦の存在感も抜群ですね。彼はこの物語の探偵役でもあり、なぎさ曰く、王子様のような存在なのですが、事件の解決とともにあたかも魔法が解けるようにどこにでもいるような普通の人間に成り下がります。引きこもりの少年が外の世界へ向けて一歩踏み出したことによって現実世界へ帰還するという大人への成長を、あたかも退化のように表現したところが秀逸ですね。 他にも担任教師や花名島といった大人と子供の間で揺れている人々の苦悩を描いているところも見逃せません。主要人物の描写だけに終始する視野の狭い物語よりは、こういった脇を固める人々の悲喜交々まで丁寧に描き、そこからテーマを強く伝えようしている作品に魅力を感じるのは道理でしょう。 この作者の文章は独特なだけに当然人を選びますが、肌に合う人にとっては心の名作になりうるだけの作品だと思います。 |
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